Ethan Mollick、AIのジャグドフロンティアとボトルネックを論じる
The Shape of AI: Jaggedness, Bottlenecks and Salients
Ethan Mollickは、AIの能力が不均一なまま伸びる以上、人間の仕事を完全には代替しにくいと論じている。ボトルネックが1つ解消されると全体が一気に進む例として、Google の Nano Banana Pro と NotebookLM のスライド生成を挙げ、ベンチマークではなくボトルネックを見るよう勧めている。
Mollickは2023年に共著者と作った「Jagged Frontier」という言葉を振り返る。AIは高度な医療診断や難しい数学で人間を超える一方、単純な視覚パズルや自動販売機の運営には弱い。Tomas Pueyoは、拡大するフロンティアがいずれジャグドネスを上回ると主張した。これに対しMollickは、LLMが新しいタスクを恒久的に記憶して学習できない点などから、超賢いAIが人間のタスクと完全には重ならない可能性があると述べる。記憶は研究者の想定より難しい課題かもしれないという。
ボトルネックには二種類ある。一つはAIが人間以下にとどまる弱点で、医用画像の読影、利用者に反論できないこと、ハルシネーションの残存などが例だ。もう一つは能力と無関係な制度上の制約で、新薬候補の発見が速くなっても、臨床試験の患者募集やFDAの人間による審査が律速になる。GPT-4.1がCochraneレビュー12本を2日で再現・更新した研究では、人間の約12人年分に相当する作業を処理し、精度も人間を上回ったが、補足ファイルの入手や著者へのメール照会ができず、エラーの1%未満とはいえ完全自動化には人間が必要だった。
Mollickは歴史家Thomas Hughesの「reverse salients」という概念を紹介する。システム全体の前進を止めている単一の問題が解消されると、全体が一気に進むという考え方だ。例として、Googleの画像生成AI Nano Banana Proを挙げる。画像生成モデルと、情報を検索しながら指示を補助する賢いAIを組み合わせたもので、文字の整合性や角度、影も良好な画像が得られたという。
この進歩はスライド作成にも及ぶ。ClaudeやChatGPTはコードでPowerPointを作るため制約があるが、NotebookLMはGeminiとNano Banana Proで各スライドを1枚の画像として生成する。手描き風や1980年代パンク風など多様なスタイルを試せる。画像は編集できない点など未完成の部分も残る。Mollickは、コンサルタントやデザイナーの仕事は合意形成や暗黙のルールの理解など人間が得意な多数のタスクで成り立つため、直ちに置き換わるとは限らないと見る。次のボトルネックとして記憶、リアルタイム学習、物理世界での行動を挙げ、飛躍は突然来るため、機会とともに注視すべきだと結んでいる。
出典: One Useful Thing (Ethan Mollick) · oneusefulthing.org