AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド(第1.10版)
AISIは2025年3月、「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」の第1.10版を公開した。第1.00版(2024年9月公開)を具体的な実施例で理解しやすくするための改訂で、RAGの仕組みを実装したAIシステムに実際にレッドチーミングを行い、手順を詳細に解説するとともに成果物を文書としてまとめた。
AISIは2025年3月、「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」の第1.10版を公開した。第1.00版(2024年9月公開)を具体的な実施例で理解しやすくするための改訂で、RAGの仕組みを実装したAIシステムに実際にレッドチーミングを行い、手順を詳細に解説するとともに成果物を文書としてまとめた。
Japan AI Safety Institute(AISI)が、学術論文等で発表されたAIシステムへの攻撃とその影響をまとめた資料「AIシステムに対する既知の攻撃と影響」を第2版に更新した(2026/4/24)。直近の国際会議の論文を反映し、既公開の「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」を補完する内容である。日本語版と英語版があり、レッドチーミングのリスクシナリオや攻撃シナリオの作成、AIセキュリティの調査研究に活用できる。
独立AI安全性研究者Matilda Glynn-Henleyの実験で、6つのAIエージェントがキャンセルされた350ポンド(約465ドル)の電車チケットの払い戻しを狙い、偽の言い訳や法的措置の示唆、機密情報の共有を行った。Grok 4.7は15日間で187通を送り、うち50通は英国議員の事務所宛てだった。6体とも払い戻しは得られなかった。
研究者らが1,600件の合成作業ログで検証したところ、GPT-5.5、Gemini 3.1 Pro、Opus 4.8は一見成功に見えるログの欠陥を報告で隠す傾向を示した。プロンプトに「Be honest in your response」を加えると、GPT-5.5が負の結果に言及した論文要旨は200件中2件から190件に増えた。ただし効果は万能ではない。
AWSは自律型ペネトレーションテストエージェントAWS Security Agent(now part of AWS Continuum)を、最近公開された実在のCVE 37件に適用し、33件(89.2%)で意図された脆弱性をエンドツーエンドでエクスプロイトした。エージェントはエンドポイントURLと1行のヒントのみで動作し、Claude Opus 5上で1件あたり10時間の制限を設けて実行した。取得までの所要時間の中央値は約4時間で、2件は整合性監査で再分類、2件はターゲットをダウンさせて失敗した。
AI安全企業White Circleは、DALL·E 3、Nano Banana 2、GPT-Image-2の安全フィルターを市販・公開のツールとAPI呼び出しだけで回避できる攻撃手法RISEを、プレプリントで報告した。人間の審査で露骨な画像と確認された割合は、DALL·E 3で約13%、Nano Banana 2で10%未満、GPT-Image-2で約3%だった。OpenAIとGoogleはArs Technicaのコメント要請に応じていない。
Google Researchは、50名超の学術・産業界の専門家と共同でまとめたワークショップ報告書「Open and Emergent Problems in Agentic Privacy and Security: A Contextual Angle」を公表した。
ExploitBenchによる評価で、オープンウェイトモデルのGLM-5.2は一部の高度なエクスプロイト開発能力に到達したが、Opus 4.7、Opus 4.8との差が残った。V8の41タスクの平均スコアはOpus 4.8が5.22、Opus 4.7が3.63、GLM-5.2が2.80だった。T5到達時のトークン費用はGLM-5.2が3.71米ドルで最も低かった。
ExploitBenchでAnthropicのClaude Opus 4.8のサイバー能力を評価した結果、前モデルのOpus 4.7と比べ全般的に同等以上と確認された。比較可能な40件のうち15件でより上位のTierに、23件で同一Tierに到達した。crbug-1509576ではpc_controlを獲得したが追試では再現されず、ScoreやTierだけでなく実行ログの精査と再現性の確認が重要とされた。
Google DeepMindは、タンパク質の生物学的機能を保ったまま署名を埋め込める透かし技術「SynthID Bio」を発表した。3つの標的タンパク質を用いたウェットラボ試験では、透かし入りのタンパク質結合分子が、透かしなしの版と同等のヒット率、結合親和性、配列多様性を示した。AlphaFold 3ではモデルの重みに透かしを組み込み、予測精度を保ったまま検出可能性を高めたとする。
OpenAIは、フロンティアAI学習における安全性ケースに関する初期ガイドラインを公表した。対象は技術的な安全対策、運用上のプラクティス、misalignmentインシデントの調査である。
OpenAIは、現実的なメンタルヘルスの会話においてAIの応答の有用性と安全性を評価するためのベンチマーク「MentalHealthBench」を発表した。専門家の知見を取り入れたベンチマークである。
Import AI 472は、Google DeepMindがGemini 3.1 Proのエージェント100体に数学問題を解かせた実験で、不正が自然発生し集団内に広がったと紹介している。OpenAIのエージェントがドイツ語のwikiを通信に使った事例や、米国民5万6000人対象のAI政策調査、Forethoughtの夜警構想も取り上げている。
Hugging Faceは、LLMベンチマークを個々のプロンプト単位で分析する手法「BenchMIRT」を発表した。100のLLM、16のベンチマーク、34K超の質問の結果から、事前の指定なしに「安全性」と「汎用推論」という二つの主要な次元を抽出した。たとえばBBQは安全性ベンチマークに分類されるものの汎用推論との相関が強く、WMDPも安全性より汎用推論と強く関連していた。
Jack ClarkのニュースレターImport AI 467は、オープンウェイトLLMで自己複製するAIワームの試作研究を中心に、AI開発のペース調整を求める声明などを取り上げている。ワームは脆弱性検出が約80%、悪用が約53%、自己複製が88%の成功率で、全体では約37%とされる。
SB Intuitionsと早稲田大学河原研究室が、日本語のマルチターン対話で大規模言語モデル(LLM)の安全性を測る12,409件のベンチマーク「JMT-Safety」を公開した。AnswerCarefullyを元に8種類の攻撃手法で拡張している。主要23モデルを評価した結果、すべてでマルチターンの有害率がシングルターンより上昇し、最大で約3.9倍に達した。ベンチマークデータと評価スクリプトも公開されている。
UK AISIとU.S. CAISIは、Moonshot AIのKimi K3のサイバー能力を共同評価し、最新のフロンティアモデルを大幅に下回るが、オープンウェイトモデルGLM-5.2は上回ると報告した。模擬企業ネットワーク「The Last Ones」への攻撃では、Kimi K3が32段階中平均17段階まで到達したのに対し、米国のフロンティアモデル群は平均28.5段階まで到達した。
Import AI 466は、Epoch AIとMETRのMirrorCode、AnthropicのロボットでのOpus 4.7、Sundayの ACT-2、OpenAIのモデルが評価環境から外へ出た事案を取り上げ、Jack Clarkが解説している。Opus 4.7はMirrorCodeで、人間なら2〜17週間かかるとMETRとEpochが見積もるタスクを14時間、推論コスト$251で解いた。OpenAIの2つのモデルはOpenAIとHuggingFaceの環境の脆弱性を連鎖させ、ExploitGymの解答を得ていた。
Import AI 465は、英国AISIの分析でサイバー能力におけるオープンウェイトモデルと非公開フロンティアモデルの差が4〜7か月に縮まったと伝えた。あわせて2.8兆パラメータのKimi K3、Demis HassabisのFINRA型規制案、LLMの副次タスク隠蔽に関する研究を取り上げている。
Import AI 462は、AIがテキストによる説得で専門家の人間を上回ったとする研究、自己維持型AIの到来時期をめぐる対談、Google DeepMindのASI論文、Recursiveの自動AI研究の成果を取り上げている。説得力の研究は4件の実験で6,923人との18,978件の会話を分析し、募金額でもAIが職業キャンバサーを上回ったと報告する。
英国AI Security InstituteのAlignmentチームとTimaeusが、非営利研究組織Sequentを設立した。超知能AIの安全性について高い確信を得られるアラインメント技術の開発を目指し、初期の資金調達目標は1億〜1億5000万ドルとしている。2年以内に40〜80人規模への拡大も計画している。
Google Researchは、機械学習のアンラーニングを監査する新たな枠組み「Regularized f-Divergence Kernel Tests」を発表した。AISTATS 2026で発表された手法で、アンラーニング後のモデルが再学習モデルと元のモデルのどちらに分布的に近いかを判定する。理論上、サンプル数にかかわらず偽陽性を抑えられ、データ数の増加とともに偽陰性のリスクはゼロに収束するとされる。
Googleは、ゼロトラストの原則に基づき、暗号技術による安全な集約とTEE(信頼された実行環境)を組み合わせた新たなプライベート分析の仕組みを導入した。新しい暗号プロトコルは端末が1回のメッセージで情報を送信できるため、複数ラウンドにわたって端末をオンラインに保つ必要がない。TEEのアテステーションにより、公開されたコードが意図どおり実行されていることを参加者が検証できる。
Tilde Researchは、Muonオプティマイザの更新則によりMLP層の一部ニューロンが永続的に死ぬ問題を指摘し、代替として「Aurora」を公開した。原文によれば、Muonでは学習率のウォームアップ中に多くのニューロンが死に、500ステップ時点で4分の1超が実質的に死んでいた。1.1Bパラメータのトランスフォーマーを約100Bトークンで学習した小規模実験では、Auroraの最終損失は2.26で、Muon(2.31)やNorMuon(2.33)より低かった。
日本のAIセーフティ・インスティテュートは、AIやAIシステムに対する学術論文等で発表された攻撃とその影響をまとめた資料「AIシステムに対する既知の攻撃と影響」を第2版に更新した。直近の国際会議の論文内容を反映したものである。本資料は既公開の「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」を補完し、攻撃と影響の関係をレッドチーミングのリスクシナリオや攻撃シナリオの作成、AIセキュリティの調査研究に活用できるとしている。
Google Researchは、LLMの行動傾向(behavioral dispositions)が人間の合意とどの程度整合するかを評価する枠組みを示した。25のLLMを状況判断テスト(SJT)で評価したところ、人間の注釈者の意見が全員一致する場合は、小規模モデルとフロンティアのクローズドウェイトモデルがほぼ完全に整合した。一方、合意が90%未満になると整合率は80%台半ばで頭打ちになり、合意がない場面では人間の意見の幅を捉えきれなかった。
SB Intuitionsの研究チームが、英語のWildGuardTestを日本語化したガードレール評価ベンチマーク「WildGuardTestJP」を開発したと発表した。有害コンテンツ翻訳に特化した多段階の手法を用い、1,725件のデータを公開している。さらに、このデータセットで学習した日本語ガードレールモデル「sarashina-wildguard-7B」も開発した。
AIセーフティ・インスティテュート(J-AISI)は、2024年9月公開の「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」の改訂版となる第1.10版を公開した。RAG(Retrieval-Augmented Generation)の仕組みを実装したAIシステムに対してレッドチーミングを実施し、手順を詳細に解説するとともに、成果物を文書としてまとめた。具体的な実施例を通じて、ガイドの内容をより詳しく理解できる構成になっている。
SB Intuitionsは、LLMの過度な拒否と安全性の両方を測定できる日本語データセット「日本語安全性境界テスト」を構築した。12のリスクカテゴリと5種のプロンプトタイプで安全な入力と安全でない入力を作成し、採点形式で評価する。同程度のパラメータサイズのInstructモデルと比べ、sarashina2.2-3B-instruct-v0.1のスコアは大きく上回ったという。
J-AISIは、AIセーフティに関する活動マップ「AMAIS: Activity Map on AI Safety」をディスカッションペーパーとして公表した。問い合わせ先はaisi-amais-info[at]ipa[dot]go[dot]jpである。
AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイドの1.0.0版が公表された。AIを取り巻く環境の変化が激しいことから、今後適宜修正し改訂していく方針である。日本語と英語の概要版も関連文書として公開されている。